受賞作品展⽰ 作⽂部⾨
令和5年度(第60回)受賞作品

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文部科学大臣賞(低学年の部)

わたしのかぞく、にこ

愛知県 岡崎市立本宿小学校 2年

鈴木 心

 わたしの家には犬がいます。「にこ」と言う名前の犬です。ちゃ色で耳がたれていて、はながぺちゃっとひくくて、少し太ったかわいい犬です。せいかくは、あまりほえないけどとてもくいしんぼうです。
 今年のはじめ、にこのちょう子がおかしくなりました。
「なんかはあはあしているね。」
「大すきなごはんをたべないけどどうしたんだろう。」
 お父さんとお母さんが心ぱいして、どうぶつびょういんにつれて行きました。
「はいえんになっているから入いんしよう。」
先生に言われて、にこはさんそのたくさんあるへやに入いんすることになりました。
「はいえんってなあに?。」
お母さんに聞きました。
「うまくいきができなくて、おぼれているみたいにくるしいんだって。」
お母さんは言いました。スイミングでもいきつぎの時くるしいから、そんなかんじかなあと思いました。
 まい日、お父さんとお母さんといもうととお見まいに行きました。でん子レンジのようなぎん色のきかいのおへやの中で、ふあんそうなかおのにこを見ると、早く家にかえってきてほしいなと思いました。
 何日かして、
「たいいんしてみようか。」
と先生が言ってくれました。お家の犬小やをお父さんがとうめいのテーブルクロスを天じょうとかべにはって、とくせいのさんそしつが出きました。
「これでにこも、くるしくなくお家にいられる。」
 わたしもいもうともにこがかえってきてくれることがうれしくてわくわくしました。
「にこ、おかえり。」
と言ったけど、まえまではりょうりをするお母さんのそばにすわってたり、お父さんのひざにのってなでてと目で知らせたりしていたにこは、さんその小やの中ではあはあとねているだけでした。
 お父さんとお母さんは心ぱいして、体をふいてあげたり、くすりをのませたりしてよう子を見ていました。なるべくるすにしないようにして、家ぞくみんなでにこに話しかけたり、にこのちかくでねたりしました。
 土よう日、お母さんはしごとにいっていて、わたしはお父さんといもうとと少しだけかいものに行きました。かえってきて、
「ただいまあ!」
とリビングのドアをあけたらじゅうたんの上でにこがねていました。
「さんそのおへやに入ってないとだめじゃん。」
わたしは大きな声を出してしまいました。
 でもにこはうごきませんでした。だれもいない間ににこはしんでいました。
 すべてのことに気づいたお父さんがにこをだいて大きな声でなき出しました。男の大人の人があんなに大きな声でなくのをはじめて見ました。わたしもにこがしんでしまったことに気づいて、いもうとと家の外に聞こえるくらい大きな声でなきました。あったかいにこの体はまだゆすったらおきるんじゃないかと思うくらいやさしい毛なみとやわらかさでした。
「おきて!おきて!おきて!」
しごとからかえってきたお母さんのなみだも止まりませんでした。
 その日はみんなリビングでにこと一しょにねました。くらいへやでにこを見るといつもと同じねているにこに見えました。
 つぎの日、たくさんのお花と一しょに火そう場というところにつれて行きました。
「お友だちと一しょにけむりになって、にじのはしに行くんだよ。」
とお母さんが言いました。
 その日からにこはこの家から本当にいなくなってしまいました。いつもまどから外を見てわたしがかえってくるのをまっていたにこはいません。ねる時にふとんに入ってくることもありません。へんな気もちがしました。
 わたしが生まれた時にはにこはすでにこの家の家ぞくでした。にこがいなくなって、当たりまえだと思っていた家ぞくの形がかわったことに少しずつ気づいてきました。
「今を生きることはあたり前じゃない。」
生きものをかう大へんさといのちの大切さを知りました。元気に学校に行けること。朝ひるばんのごはんをたべられること。友だちとこうえんであそべること。今は今しかないから大切にくらしていきたいと思いました。
 夏休みに、にこのおはかまいりにしずおかに行きました。お寺で手を合わせわたしは心の中で言いました。
「にこがいなくなってみんなとすごす大切さが分かったよ。まい日さみしいけどみんなでなかよくくらすよ。にこのことずっとわすれない。わたしの家ぞくでいてくれて本当にありがとう。」

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審査員のコメント

 大切な家族であった犬のにこの死に対して、家族全員の、にこが病院から家に戻ってきてからの行動、死に直面した直後の様子、その後の心さんの素直な気持ちを、丁寧な行動描写とともに表現することができていました。家族それぞれに、にこのことを大切な家族として接してきたのかが、痛いほど伝わってくる作品でした。にこの死に接することから、今を生きる大切さを学んだ心さん。一日一日を大切に生活していってください。
crown

受賞者の言葉

 夏休みの作文はにこのことにしようときめていました。
今でも思い出すとなみだがでてしまうけど、作文にすることであの時のことをわすれないような気がしたからです。もう一ど家ぞくで思い出しながら書きました。
 わたしの作文を読んでくれた人みんながにこのことを少しでもしってくれたことがとてもうれしいです。
 にこがいなくなって1年がたちました。今でもお父さんとお母さんと妹と毎日のようににことの思い出を話しています。リビングににこのしゃしんがかざってあって、そのにこに「しょうをとったよ!」とほうこくするができました。ありがとうございました。
 にこがいない毎日はまだなれないけど、みんなですごした日びはわたしのたからものです。
 またどうぶつをかう日が来たとしてもにことくらした時のようになかよくくらしたいなと思います。