受賞作品展⽰ 作⽂部⾨
令和6年度(第61回)受賞作品
文部科学大臣賞(低学年の部)
君の未来は私が作るよ
カナダ オタワ補習校 3年
東村 萌
「あった!あったよ、お母さん!あった!」
カナダに住んでいる私は、今年の冬、久しぶりに日本に行きました。日本で楽しみにしていたことの一つが、新しく発売されるドラえもんの小説を買うことでした。発売日に本屋さんに行ったのに、なかなか見つかりません。三番目に行った本屋さんでようやく発見しました。何度もインターネットで本の写真を見ていたので、遠くからでもすぐに分かります。いつもの水色のカバーに、今年はのび太くんたちが楽しそうに楽器をひいている絵。これが今年の新しい小説、「地球シンフォニー」です。私は新しい友達が出来た時のようにワクワクする気持ちがあふれてきました。すぐに本を手に取ると、母の手をぐいぐいと引っぱりながら、早歩きでレジに向かいました。
私は五さいの時からドラえもんが大好きです。母が日本から持ってきたまんがを読み始めたのがきっかけです。まんがやアニメ、映画もよく見ていますが、毎年冬に発売されるドラえもんの小説を何よりも楽しみにしています。なぜかというと、この小説はドラえもんの映画と同じ話ですが、映画より一か月くらい早く発売されるのです。新しい映画を待ちきれない私は、小学一年生の時からこの小説を読むようになりました。
初めて小説を読んだ時、私はとてもおどろきました。何度ページをめくっても、絵が一つもありません。それだけで読むのがいやになってしまいました。それでも、ドラえもんの話が気になってしょうがないので、しぶしぶ読んでみることにしました。すると、あっという間に目がはなせなくなり、登場人物が頭の中で動き始めました。
「だから絵がなくてもいいのか!」
私は小説に絵がない理由が分かりました。一ページにじょうほうがつまっていて、文を読むだけでそのシーンを思いうかべることかできるのです。たとえば、「大きな柱から、いく筋もの水が滝のように落ちてきた。それはまるで、水の弦を張ったハープのようにも見える」(一)という文を読むと、アニメを見ているように、頭の中にそのけしきが広がります。
小説には、アニメや映画にはないすごいところもあります。本当に夢中になって読んでいる時には、いつの間にか、自分がのび太になっているのです。ドラえもんの世界に入りこんで、いっしょにぼうけんしたり、笑ったり泣いたり怒ったりできるので、私は小説が大好きになりました。大好きな話は、何度も読み返します。一番のお気に入りの本は、五回も読み返しました。読み返せば読み返すほど、言葉の意味が分かってきて、話がもっと面白く感じられます。
そんな私のしょう来の夢は、作家になることです。面白くて、話が頭でふくらむような表現をたくさん使って、「次のページをめくりたくてしょうがない!」と思ってもらえる本を書きたいです。そして、有名な作家になった時には、ドラえもんの小説を書けたらいいなと思います。ドラえもんの作者はもう亡くなってしまったけれど、ドラえもんの世界を守ってくれている会社があると知りました。私もいつかその会社に入って、ドラえもんをもっと大好きになってもらえる小説を作っていきたいです。私は作家になるために、本をたくさん読んで新しい表現を学んだり、作文をできるだけ毎日書いたりしています。
「ああ、読み終わったあ!」
あっという間に、今年の小説も読み終わりました。さいごにパタンと本を閉じるしゅん間は、体全体で大きなばんざいをするくらいうれしい気持ちになります。でも、「もっとゆっくり読んだら良かったな」と読み終わってしまって、さみしい気持ちにもなります。私はまた長い時間を待たないといけません。一日千秋どころか、一年三十六万五千秋です。
受賞者の言葉
審査員のコメント