受賞作品展⽰ 作⽂部⾨
令和6年度(第61回)受賞作品
全国都道府県教育長協議会会長賞
ぼくの大事ななかま金魚
宮城県 気仙沼市立新城小学校 4年
弘瀬 敏蒼
「おはよう。朝ごはんだよ。」
水槽の前で金魚に声をかけながらエサをあげます。眠い目をこすりながら起きるぼくの毎朝の日課です。ぼくは店の水槽で泳ぐ金魚を見るたび、きれいだな、かわいいなと思い、飼ってみたくなりました。でも、生き物を飼うのは大変だからとお父さんに言われ、なかなか飼うことができませんでした。そして、何度もお願いして、ようやく、
「大切に、責任を持って飼うこと。」
そうお父さんと約束をして飼うことになった金魚です。
水槽を置く場所を決めたり、水槽に入れる水草を選んだり、全魚を飼う準備はワクワク、ウキウキ楽しいことばかりでした。金魚を飼うことは楽しいことだらけのような気がしていました。難しさや厳しさをぼくはまだ全く知りませんでした。
金魚たちは毎朝、スプーンにのせたエサを入れようとすると水槽のはじにいっせいに寄ってきて、水面に口をパクパクさせて、
「おなか空いたよ、早くごはんちょうだい。」
と言っているように見えます。毎日見ているとそれぞれに小さなとくちょうがあることに気づきました。金魚はオレンジ色や銀色です。でも、銀色の金魚が飼っているうちにだんだんとオレンジ色になったこともあります。オレンジ色でも、赤みがかった濃いオレンジ色だったり、うすいオレンジ色だったり、びみょうに色がちがいます。体の大きさはそれぞれちがうし、背びれや尾びれの大きさもちがいます。元気な時はひれがよく動いているけれど、動きが悪い時には少し弱っているようです。エサを良く食べるかどうかだけでなく、ひれの動きなど、金魚を良く見ていると元気かどうかわかるんだなとも思いました。そうして観察しながら飼っているうちに、だんだんと金魚の見分けがつくようになりました。わかりやすく見た感じそのままの名前をつけて呼び、一匹一匹のかわいさが増しました。飼い始めるまでは、毎日続けなくてはいけないエサやりが一番大変かと思っていました。でも、実際エサやりは一番楽と言ってもいいほどでした。本当に大変なのはトラブルが起きた時です。飼育に慣れていないぼくにとっては一大事です。本やネットで飼い方を調べて、金魚の飼育にくわしい近所のおじさんにも話を聞き、ぼくなりに準備をして飼い始めたつもりでした。でも、水がすごくにごりやすかったり、急に金魚の元気がなくなったり、困ることばかりでした。そのたびに、また聞いたり調べたりしました。苦しそうに泳ぐ金魚にどうしてあげたらいいのかわからずに、飼育の難しさを感じました。お父さんが生き物を飼うことは大変だと言ったことに少しなっとくできました。
飼い始めて数か月経ったころには金魚は半分の数になっていました。みんなから離れるように泳いで、なかなかエサも食べられない一番小さな金魚のキン、ほかの金魚とは色が違う銀色っぽい金魚のギンという、かわいがったとくちょうある金魚二匹も水槽にはいません。さまざまな原因で金魚は死んでしまいました。そのたびに、ぼくは悲しくて涙が出ました。毎日声をかけてかわいがったのに、元気に泳いでいたのにとくやしくて、悲しい気持ちでいっぱいでした。水槽を見るたびにキンやギンが泳いでいないことにしょんぼりとしてしまいました。生き物を飼う難しさや悲しさを知りました。
エサやりは、もしも忘れてしまっても、金魚は空腹には強いようで、すぐに元気がなくなるようなことはありません。でも、水槽の水はきれいにし過ぎても、汚すぎても良くありません。水によって、元気に泳げたり、病気になってしまったりします。水かえは重要です。金魚は水質にデリケートなのかもしれません。水槽の水は見た目だけでは金魚にとっていい水質状態なのかどうか判断がつかないので、むずかしいなと思います。水質が悪くて病気になってしまったのかな、と不安な気持ちにもなります。
水槽に残って元気に泳ぐ金魚たちに、
「がんばれ。元気に泳いでね。」
そう応授しながら飼いました。元気がなくなったときには、別の水槽を用意して塩水浴をさせてみました。塩水に入れることで金魚の体力や病気が回復して元気になると知ったからです。ぼくもできることをせいいっぱいして元気に過ごせるように見守りました。
最初から飼っている金魚のうち一匹は、ほかの金魚の倍以上の大きさになりました。あまりにまん丸にどんどん大きくなるので、この金魚はデブと名付けていました。エサもよく食べて、堂々と泳ぐとても元気のいい金魚です。一番安心して見ていられます。
ある日、急に泳ぎ方がおかしくなりました。体を横にしたまま泳いで、いつもの泳ぎ方ができずに苦しんでいるように見えました。急いで塩水浴させてみました。水槽の前でがんばれといっぱい応援しながら様子を見続けました。けれど、堂々とした元気な泳ぎを見ることはもうありませんでした。どの金魚より大きく成長する様子をずっと見てきました。その分ショックが大きかったです。あんなに大きくなって、元気に力強く泳いでいても、こんなに急にいなくなってしまうのかとボロボロと涙がたくさんあふれてきました。
金魚を飼い始めてもうすぐ一年になります。金魚を助けてあげられなくて、何度も泣いて、悲しい思いをしました。そのたびに、生き物を飼う難しさをとても感じました。飼いはじめる時のお父さんとの約束を守って、大切にせきにんを持って飼えているのか、自信を持てなくなりました。
でも、弱ってしまった金魚が塩水浴で回復して、また元気に泳ぎまわるようになったときには、うれしくて飛び上がって喜びました。本当によかったと安心しました。
悲しいこともうれしいことも経験して、小さな金魚が、元気に水槽の中を泳ぐことは、当たり前ではないのだと学びました。どんな生き物であっても、生きているものの命を守ることは、かんたんではないこと、とても大変で難しいものだと知りました。飼いたいというこうきしんで飼い始めましたが、小さな金魚からたくさんのことを学びました。何より、命はとても大切なもので、かけがえのないものだとあらためて感じています。水槽の中を元気に泳ぐ金魚たちをこれからも大切に飼っていきたいです。