受賞作品展⽰ 作⽂部⾨
令和6年度(第61回)受賞作品
全国連合小学校長会会長賞
ぼくに足りないもの
愛知県 岡崎市立三島小学校 4年
片岡 叶多
ぼくは一週間の中で月曜日が一番きらいです。月曜日なんて来なければいいのになと毎週思っています。なぜかというと、スイミングの習い事があるからです。ぼくは、小学校に入学する少し前からスイミングを習い始めました。初めはぼくもお兄ちゃんやお姉ちゃんのようにスイスイ泳げるようになりたくてスイミングを習おうと思いました。でも、ちょうどそのころコロナかでもあったし、お兄ちゃんのじゅ験など家の事じょうでスイミングも休みがちでした。そして気づけば小学四年生。時間だけすぎていき、プールに対してのにが手意しきだけはどんどん大きくなっていきました。泳ぎの方はというと、思うようにはなかなか泳げません。
ぼくの一週間はこうです。月曜日、とにかくこの日は一週間の中で一番いやで、学校が終わったらスイミングがあると思うといつも朝から体調がよくありません。スイミング前になるとおなかがさらにいたくなったり、頭がいたくなったりします。でも夕方、スイミングが終わるとぼくはとたんに元気になります。火曜日から土曜日までは毎日楽しくすごすことができます。でも、日曜日になると次の日のことを考えてしまい、日曜日の夜になるとなんだがぼくの気分や体調はジェットコースターのように急こう下します。
そんなぼくの様子から、月曜日のスイミング前はぼくとお母さんでちょっとした言い合いが始まります。
「なんか今日はおなかいたいな。」
とぼくか言うと、
「スイミングがあるからでしょ。」
とお母さんに言われてしまいます。そして、決まってこう言われます。
「そんなに行きたくないならスイミングやめればいいよ。いつも言ってるけどお母さんは子どものころ、スイミングを習っていなかったから泳げなくて毎年水泳のじゅ業のきせつがいやでいやで仕方なかったの。できれば自分の子どもには同じ思いをしてほしくないから三人ともスイミングには通わせてるの。でも叶多がそんなにいやだったらやめてもいいよ。この先こまったり、つらい思いをするのはお母さんじゃなくて叶多なんだから。」
いつも聞かされるお母さんの言葉で、今日は行こうか休もうか、スイミングをやめようかがんばって続けようか、ぼくの頭の中でかっとうが始まります。やめればおなかがいたくなるのはなくなるし、毎週日曜日になると気分が急こう下することもない。でも、きっとやめたら泳げないままで、毎年水泳のじゅ業がつらくなる。ぼくはしばらく考えて、この先いやな思いをするなら今がんばろうと気持ちをふるい立たせて
「お母さん、今日のスイミング行く。」
と伝えました。お母さんはさっきまでのぎびしい顔とはちがってやさしい顔で
「叶多はもっと自しんを持っていいんだよ。行くときめたならがんばれ。」
と言ってくれました。
ある月曜日、毎回スイミングをいやがるぼくを見て、お母さんとお姉ちゃんがスイミングの様子を上から見学してくれました。ぼくは見学に来てくれていることを知らなかったけれど、お母さんとお姉ちゃんのすがたを見つけていつもより少しだけやる気が出ました。その日家に帰ると、お母さんとお姉ちゃんがぼくに言いました。
「叶多、毎回スイミングに行くのいやがるから全然泳げないのかと思ってた。思ったよりは泳いでいてビックリしたよ。あと叶多に足りないのは自しんを持つことかな。」ぼくがスイミングをいやがるあまり、お母さんたちから全く泳げないと思われていたのだろうかとも思ったけれど、じっさいまだクロ—ルはいきつぎの仕方を教えてもらっていないので、いきが苦しくなる数メートルしか泳げません。
夏休みに入ってすぐ、二か月に一回行われる進級テストの日がやってきました。スイミングの時間が近づくにつれて、ぼくの気持ちはどんどんしずんでいきます。そんなぼくを見て
「もし、テストがふ合かくになっちゃっても別にいいんだよ。できなくても自しんを持ってどうどうとやれば、できてるっぽく見えるもんだよ。」
と、お母さんは言いました。ぼくの心はスイミングに行きたくない気持ちとふ安な気持ちと、でも合かくしたい気持ちでとてもふくざつです。スイミングの入ロに入る直前、
「叶多、自しんを持ってがんばれ。」
と、お母さんがぼくのかたをトントンとたたきました。ぼくは失敗してもよし、がんばるぞと気合を入れました。そしてぼくはお母さんのアドバイス通り、自しんを持って泳ぎました。結果、合することができました。次の級はいきつぎの練習もあるので、今より長いきょりを泳げるようにがんばります。
今回、進級できたけれどやっぱり月曜日はきらいです。でも、ぼくに足りないものは自しんを持つことで、自しんを持って取り組む大切さを知りました。まだまだ自分に自しんを持つことはむずかしいけれど、これから先、自しんを持って色いろなことにチャレンジしていきたいです。