受賞作品展⽰ 作⽂部⾨
令和6年度(第61回)受賞作品
全国連合小学校長会会長賞
車いすのばあちゃん
愛知県 岡崎市立六名小学校 5年
橋本 総一郎
「そうくん、あれ取ってくれる。ばあちゃんとどかないから。」
「いいよ。これでいいの。」
「うん、それそれ、ありがとう。」
ぼくのばあちゃんは車いすに乗って生活しています。ぼくが生まれる前からそうなので、ぼくにとっては、それが当たり前の日常です。イオンにじいちゃんとばあちゃんと行くときは、じいちゃんのこしがいたくなるので、ぼくがばあちゃんの車いすを押します。ぼくは覚えていないけど、歩けるようになった一才から、ばあちゃんの車いすを押していたと母から聞きました。
ばあちゃんが車いすで生活できるように、ぼくの家には、他の家にはない特別なものがたくさんあります。まずは、車です。ばあちやんは足が不自由ですが、車を運転します。でも、足が使えないので、アクセルとブレーキがふ通の車と同じ場所にはありません。全部手でそう作できるように、左手にレバーがあり、そこでアクセルとブレーキの役割をします。右手でハンドルを回して車を動かします。両手が常にふさがっているので、運転するときに困るのは、かゆいところがあってもかけないことだそうです。そして、家の中です。段差があると車いすで動くことができません。なので、しょうこう機を取り付けました。玄関のところに一つ、駐車場にもう一つあります。しょうこう機があることで、今までだれかがいないと、外にいけなかったのが、ばあちゃんだけで出かけることができるようになりました。それから、トイレを新しくしました。車いすで入るためには、はばが広くないと入れません。今までのトイレでは使えません。ばあちゃんが使いやすいように、リビングの近くに作りました。広いので、ぼくも気に入っていて、よく使います。また、ぼくの家はばあちゃんの家とつながっています。つなげないと、ばあちゃんがぼくの家にすぐに来れなくなってしまうので、そうしました。車いすで、行き来できるように、つながっているところは、スロープになっています。おかげで、両親が仕事で朝早く出ていっても、ばあちゃんたちがぼくの家に来ることができます。
しかし、車いすになって、今まで日常だったことがそうできなくなってしまいました。まずは、階段が上れなくなってしまったので、二階に行けなくなってしまいました。車いすを使うようになる前まで、ばあちゃんのものは二階に置いてありました。
「青色のこういう服があると思うから、持ってきて。」
「そんなの無かったぞ。」
とじいちゃんに言われてしまっても、自分では見に行けないので、困ってしまいます。それから、出かけるときに、段差があったり、エレベーターがなかったりするところには、出かけるのがむずかしくなりました。駐車場も、車いすマークのところがないと、ドアが大きく開くことができないので、乗りおりするときに困ります。トイレも車いすの人が使えるような広いトイレがないと、出かける気持ちになれません。買い物に行っても、車いすからだと、高いところにある商品がほしいと思っても、手がとどきません。ふ段の生活の中で不便がたくさんあります。
ぼくが出かけたときに、車いすの場所に車いすではない人が車を停めているときがありました。ぼくは、ばあちゃんのこともあり、おこれて仕方がありませんでした。ぼくは、家族の中で一番おこっていました。本当に使いたい人が使えないのは絶対にだめだと思います。でも、じっさい車いすマークのちゅうしゃスペースはたくさんはありません。車いす専用の駐車場に停めるために、ばあちゃんは朝早くから出かけていくときもあります。朝一番だったら、前に停めている人がいないからと言っていました。ぼくの学校にも本当は行きたいけど、エレベーターが無いし、段差もあるので、来ることができません。
ばあちゃんの車いすの生活を生まれたときからずっと見てきたぼくは、今の自分にできることはなんだろうと考えてみました。まずは、先をゆずるということです。車いすの人やベビーカーを持っている人たちが自分の後ろにいたら、「どうぞ」と声をかけて、先をゆずりたいです。それから、自分から声をかけるということです。ぼくや弟が赤ちゃんのころ、たくさんの人に助けてもらったことを母から聞きました。駅で階段しかないところで、ベビーカーに乗せたぼくと困っていた母に、声をかけてくれた人がいました。ぼくは、かなり重かったので、片手にぼく、もう片方にベビーカーなんて無理だと考えていた母は、助かったそうです。ほかにも、自転車に弟とぼくを乗せて坂を上っていた母が、と中で坂が急すぎて止まってしまい、自転車ごと転びそうになりました。近くにいた人が、すぐに来てくれて押してくれたおかげで、ぼくたちは大けがをせずにすみました。何年か経っても、
「あの時は本当にどうしようかと思った。本当に助かった。」
と母は言います。ぼくも自分から温かい声をかけて行動できる人間になりたいです。
ばあちゃんは、大きな船に乗って、旅行に行きたかったと聞きました。でも、トイレのこととか、周りにめいわくがかかるからとか、いろんな理由で、もう行かないと言います。体の不自由な人も、目の見えない人も、耳がきこえない人も、赤ちゃん連れの人も、ぼくみたいな子供も、みんなが安心して、楽しく毎日がくらせるような世界にしていきたいです。どんな場所でも困っている人がいないように、みんなで意見を出し合って、だれもがやりたいことをやれる社会をつくっていきたいです。もし、うまくいかないことがあっても、また考え直していけばいいです。ぼくの周りから、だれもがやりたいことをあきらめないでいい未来にしていきます。